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ヒトゲノムの全塩基配列が解読されたことにより、ゲノム情報を基にした有用遺伝子の探索とその利用に世界的な関心が集まっています。製薬会社や研究機関等は、これら研究を基盤にした疾患遺伝子の同定やこれらを用いた診断、さらには新薬の開発や発生・再生医療、病気の予知・予防などのゲノム医療に向かってきております。
ゲノム配列の解読が完了し、ゲノム解析が急速に進むなかで、遺伝子機能情報の重要性が一層強く認識されるようになってきました。このゲノム解析をさらに進めていくため、あるいはゲノム創薬へ応用していくためには、遺伝子の役割を解明することが重要になります。また、ヒトの遺伝子数は32,615個程度といわれておりますが、遺伝子の役割は複雑で、1つの遺伝子が複数の機能に関連していることが分かっております。
そこで、遺伝子が果たす役割を解明するためには、遺伝子の構造やタンパク質としての解析だけでは十分といえず、組織や生物個体を通した解析が必要となります。この個体レベルでの遺伝子の機能を解明するために、当社の遺伝子破壊マウスが重要な役割を果たすと考えております。
当社の遺伝子破壊マウス事業は、熊本大学の山村研一教授(当社非常勤取締役)らが開発した可変型遺伝子トラップ法という技術を用いて遺伝子破壊マウスを作製し、そこから得られる遺伝子機能情報等を製薬会社や基盤研究を行う研究機関等に提供することで、画期的な創薬や治療法の開発に役立つことができるよう、取り組んでおります。
■ゲノム医療への道のり

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当社は、遺伝子を一つだけ欠損させた遺伝子破壊マウスを作製し、遺伝子破壊マウスと正常なマウスとの差異を分析することで遺伝子の機能を解析しています。1つの遺伝子を欠損したことにより個体に現れる影響が、その遺伝子が果たす役割となるわけです。
表現型解析では、体重などの発育状況や学習能力などの行動の異変を観察したり、脳・肝臓・腎臓などのあらゆる臓器の異常、骨・血液・尿におけるタンパク質などの変化を分析します。ヒトに例えると、人間ドックの検査を行っているようなものです。
このような表現型解析を通じて、創薬ターゲットとなる遺伝子や未知の遺伝子の機能を解明し、遺伝子と病気との関わりを突き止めていくのです。
■表現型解析内容の例

学習能力検査
水迷路を用いて、錯誤回数、ゴール到達時間を測定し、学習能力を検査します |

病理組織学的検査 目の組織の写真です |
Q.なぜ、ヒトのモデル動物として、マウスを使用するのか?
マウスはヒトと遺伝子の構造(配列)が約95%同じであると言われており、創薬開発段階においてヒトで効果や副作用を測定する前の前臨床試験にも用いられるなど、ヒトのモデル動物としてのインフラが最も整っていると思われるためです。
さらには、マウスは体が小さく、大規模飼育が容易であるなど、モデル動物として取扱いやすいことや、生後4週頃に成人レベルに達し、ライフサイクルが2年程度と哺乳動物としては短く、短期間でのデータ収集が可能であることから、遺伝子機能解析に最適なツールであると考えています。
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当社は、遺伝子機能情報等を製薬会社や研究機関に提供しております。製薬会社がゲノム創薬などを開発するためには、「創薬ターゲットを探求すること」や、「その創薬ターゲットと結合して反応を速める物質や阻害する物質をいち早く見つけること」が必要です。当社の提供する遺伝子機能情報は、従来の方法に比べ、大量かつより精緻に遺伝子本来の機能を解析することができる特長があり、遺伝子情報に基づいてゲノム創薬を開発している製薬会社や、遺伝子そのものを研究している大学の研究機関などの医療・医学の場に用いられております。
創薬を開発するためには、優秀な研究者と莫大な研究開発資金が必要となります。開発期間が10年から15年と長期間にわたることもあり、創薬開発コストは200億円にも及ぶと言われています。従って、当社では、自社で創薬を開発するよりも、むしろ創薬ターゲットを探求している製薬会社に数多くの遺伝情報を提供することで、ゲノム医療の発展に貢献したいと考えております。

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遺伝子破壊マウスを作製する技術は、当社が用いる遺伝子トラップ法以外にも変異原物質法や相同遺伝子組換法など、いくつかの方法があります。これらの方法は、技術的な優劣があるというよりも、遺伝子破壊マウスを作製する目的によって、長所・短所があるといえます。遺伝子トラップ法は、遺伝子の機能情報をより早く、大量に解析する方法として最も適している手法の一つと考えられております。
■変異原物質法(ENU法)
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変異原物質ENU(エチルニトロソウレア)を投与し、精子に突然変異を起こさせた雄マウスに、雌マウスを交配させてマウスを作製する方法です。ENU法では、複数の遺伝子を破壊していることが多く、また、どの遺伝子を破壊したのか特定するのに時間がかかるという問題があります。この方法は、表現型から突然変異を検索するアプローチに使われています。 |
■相同遺伝子組換法(ジーンターゲティング法)
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ES細胞内において標的とする特定の遺伝子をこれと類似した配列の人工遺伝子に置き換え、代理母マウスに移植してマウスを作製する方法です。特定の遺伝子を破壊するのに適していますが、標的とする遺伝子ごとにベクターを開発する必要があり、作製に多くの時間を要し、コストもかさむことから、大量生産に適しているとはいえません。 |
■遺伝子トラップ法
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ES細胞内に遺伝子破壊を目的とした人工遺伝子であるトラップベクターを導入し、代理母マウスに移植してマウスを作製する方法です。どの遺伝子を破壊したのかを容易に特定することができます。
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当社が特許出願している「可変型遺伝子トラップ法」は、遺伝子の先頭(プロモーターの直後)にベクターを導入する仕組みとなっており、遺伝子の機能を完全に停止させることができるため、遺伝子機能を解析する優れた方法の一つといえます。
また、トラップベクターの中に「可変型」の仕掛けとなるマーカーを組み込んでおり、他の遺伝子(ヒトの遺伝子など)への置き換えが自在に行えるようになっています。これを用いると、臨床試験を補完する情報・データを得ることができるなど創薬開発の効率化につながる可能性があります。例えば、モデル動物において有効だった創薬候補物質をヒトに投与してみると、思うような成果が上がらなかったり、この逆も頻繁に起こりうることであり、こうしたことが「可変型」を用いると、確認することが可能となります。
■可変型遺伝子トラップ法の仕組み
正常な遺伝子の働き
可変型遺伝子トラップ法を用いて、特定の遺伝子の機能を停止する仕組み
■可変型遺伝子トラップ法の特徴
- 遺伝子をランダムに破壊することにより、マウスの大規模作製が可能である
- 遺伝子の機能停止が十分である
- 機能を停止した遺伝子の特定が容易である
- ヒト遺伝子との置換が可能である
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当社では、「ES細胞操作」「破壊遺伝子の特定」「マウスの系統樹立」という3つの工程を経て、遺伝子破壊マウスを作製し、作製したマウスの「表現型解析」を実施しております。
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1.ES細胞操作
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あらゆる体細胞に分化する能力を持つES細胞に当社が開発した「遺伝子トラップベクター」を電気の刺激を利用して挿入(これを「エレクトロポレーション」という)し、遺伝子の機能を停止させます。 |
2.破壊遺伝子の特定
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1.の工程で遺伝子の機能を停止させたES細胞のうち、一つの遺伝子だけが破壊されたものを選別し、その後、どの遺伝子が破壊されているのかを特定します。 |
3.マウスの系統樹立
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2.で選別されたES細胞と8細胞期胚を混ぜ合わせ(これを「アグリゲーション」という)、これを代理母マウスの子宮内に移植し、キメラマウスを出産させます。このキメラマウスをさらに野生型の黒マウスと交配させることで、遺伝子破壊マウスが誕生します。 |
4.表現型解析
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3.で誕生した遺伝子破壊マウスを観察・分析することで正常なマウスとの違いを解析します。
また、遺伝子破壊マウスは、胚や精子の状態で凍結保存します。これにより、作製した遺伝子破壊マウスを必要に応じ、いつでも、何度でも供給することが可能になります。
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